アートで伝える「知ってください」
――誰にでも起こりうることだと知ってほしい――
アートプロジェクトが生まれたきっかけは
19歳の若者との出会いでした。
その若者は、
後に「ユウタ」としてアート作品を発表するようになりますが
ここまでの道のりは簡単ではありませんでした。
ユウタさんは高校を卒業するまでは
一人で何処にでも出かけられる方でした。
散歩の途中、カフェで美味しい珈琲を味わったり
大好きな近代建造物を自ら撮影してSNSにアップするなど
余暇の時間を楽しく過ごし、
充実した日々を送っているように見えました。
ところが
ある出来事で外出をすることに戸惑いが生じました。
その上、新型コロナウィルスが蔓延しました。
すると、ユウタさんは感染症に対して過剰に恐れるようになり、
消毒液を何本もかけたり、窓枠に目張りをするようになって
ついには自室から出られなくなりました。
あれほど外出を楽しんでいた方が
一つのきっかけで
外出はおろか、自室から出られなくなったのです。
ご家族の生活は一変しました。
食事は家族で揃うことがなくなり、
ユウタさんの分は部屋まで運ばれました。
排泄や入浴にも支障が出て、家族の協力が必要でした。
以前のユウタさんの姿を知っている者として
何かできることはないかと考えていた時、
絵が得意だったことを思い出しました。
写真は外出しないと撮影が出来ません。
でも絵画なら
「外出しなくても描ける」
こうして誕生したアーティスト「ユウタ」によって生まれた絵画を
たくさんの人に観てもらうためにアート展へ出展し、
観た人の声をユウタさんに届け続けました。
多くの方の賞賛の声がユウタさんの心に響き、自信になり、
3年後、ついに一人で散歩が出来るようになったのです。
まだ短時間の散歩ですし、
少し離れた場所への外出は家族が一緒にいないと不安になるようですが
自室の窓を塞いでいた板を撤去しても眠ることが出来たことは
ご本人はもちろん、ご家族や我々にとって非常に嬉しい出来事でした。
ご家族はユウタさんに対して
「以前のような姿に戻るのは10年以上先の話になるだろう」
と覚悟をしていたそうです。
早い回復に至ったのは「居場所と自信」だと仰っていました。
アートプロジェクトは「居場所づくり」を基にして
アートの展示や発表の場をつくります。
特別な事情ではなく、
誰にでも起こりうることだと知ってほしいのです。
このアートプロジェクトを必要としておられる方に
お伝えくだされば嬉しいです。